2009年2月18日水曜日

「姉妹」 ルネッサンス


原題:「Sisters」

■「Novella」(お伽噺)収録



 
 シスターたちは周りにいる人々のために働いた
 彼女たちのスペイン製のレースは 貧しい人たちのパンになった
 彼女たちは心を砕き なんとかしようとしたが
 恐れと何年にも渡る悲しみに 疲れ果ててしまった

 彼女たちを知る男たちは 埃とワインで汚れていった
 怒り狂うほどに照りつける太陽の下で 汗にまみれる日々
 男たちは弱っていき 泣き叫んだ
 そして彼らは願った「シスターたちよ、おれたちを信心深くしてくれよ」

 シスターたちは祈った、「われらに何か希望をお与え下さい」
 男たちは問うた 「あんたたちの神は今日はどこにいるんだい?」
 祈りを捧げている間 シスターたちのうつろな目は
 言葉にできない思いを たたえていた。

 彼女たちにできることは何もなかった
 周辺の大地は何マイルにも渡って埃しかなかった
 この土地では 新しく根付くものはなく
 どんな作物もできなかっった
 そして彼女たちが理解しようとしていた真実は 死んでしまったのだ



 The sisters worked for the people round them
 Their Spanish lace wove some bread for the poor
 And they cared and tried but were worn with
 Their fears and the years of heartbreak

 Dust and wine stained the men who knew them
 The sweat of days in the angry sun
 And the men were weak, and they cried
 And they asked, "Sisters, make us holy."
 
 The sisters prayed, "Give us hope for something."
 The men asked, "Where is your God today?"
 And the empty eyes as the sisters prayed held
 Their thoughts unspoken
 
 There was nothing they could do
 Earth was dust for miles around
 Nothing new survived
 Everything was barren on the land
 And the truth they tried to understand just died
 
 Everything was barren on the land
 And the truth they tried to understand just died
 
 
【解説】
イギリスのクラシカルロックバンド「ルネッサンス」(Renaissance)の代表的な1977年のアルバム「お伽噺」(Novella)から「Sisters」という曲である。ルネッサンスはアニー・ハズラム(Annie Haslam)という素朴なタッチの美声を聞かせるメインボーカルを中心とした、フォークグループ的な構成になっている。したがってエレキギターはいな い。クラシカルなキーボードとギター、そしてフォーク風なボーカルによるバンドなのだが、曲のドラマチックな構成、オーケストラのダイナミックな使用で、 英国随一のクラシカルロックバンドとなった。アニーの声の美しさ、それを引き立てる壮大なアレンジと、親しみ易いメロディー、そしてクラシカルなたたずま いがこのバンドの大きな魅力だ。

さて「Sisters」も名曲である。ピアノのイントロから美しいコーラスを経て、アニーのボーカルが朗 々と歌うこの曲であるが、不毛な土地でひたすら働いても報われない人々と、そこで献身的につくそうとしているsistersの悲しみが歌われている。その 中に「オレたちを信心深くしてくれよ」とか「あんたたちの神は今日はどこにいるんだい?」といった男たちの苦しみの中から出てくる皮肉は、sisters たちが神に仕えている存在であることを物語っていよう。

つまり和訳の「姉妹」は誤りであり、「修道女」、あるいは「シスターたち」を歌った歌なのだ。スペイン風レースを貧しい人のパンにかえるという表現があるが、修道士の仕事は神に祈ること以外に、子供や老人の世話をすること、自給自足の生活を送るための作業などがあった。そしてレース編みなどの手作業も生活の糧を得るための仕事であったようだ。自分たちの生活を後回しにして、周りの貧しい人へ奉仕をしていたということなのだ。

し かし「神に祈り周囲の人々に誠意を尽くし、人々もできる限りの日々の努力をすれば、いつか報われる」という彼女信仰者たちにとっての真実(truth)へ の思いは、報われないままに疲れ果て、最後に“The truth they tried to understand just died.”と締めくくられる。

悲しい物語である。しかし現実にはあり得ることであったろう。アニーの声はシスターたちの悲しみの思い、無念さを、神聖なまでに美しく表現し、オーケストラやアコースティックギターソロが、ドラマティックに曲を盛り上げていく。

「Where is your God today?(あんたたちの神は今日はどこにいるんだい?)」という問いは、現代でも常に発せられている言葉だろう。一方で神への思いだけを頼りに懸命に 生きようとしている人もいる。不毛の大地に住む貧しい人々と、そこで必死に神と人々に尽くそうとして、ついに夢破れていくシスターたちは、今もって大きな 共感を得るに違いない。

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