2009年3月20日金曜日

「ユー・アンド・アイ」 ストローブス

原題:You and I

「Ghosts」(ゴースト)収録







ぼくは時々腰をおろして考える
暖炉の火に照らされた二人の夜のことを
きみとぼく
若かったあの頃
壁で踊っているように動いていた
へんてこりんな模様の影を大笑いして
何も心配事なんかなくて
時間はいっぱいあって
ほとんど言葉も交わさないまま
何時間もずっとそうしていたね
それが きみとぼく
若かったあの頃

川沿いに手をつないで歩いた
終末になるといつも
きみとぼく
若かったあの頃
魚取り用の網を持った子供たちは
獲物を持ち帰る時に笑っていたね
紙袋の中のいも虫
汚れたボロ布で結ばれた膝と膝
きみとぼく
若かったあの頃

秋には一緒に
落ち葉の中を走りぬけた
きみとぼく
若かったあの頃
将来のことの計画を建てながら
それが何を保証するかなんて全然気にせずに
どこかに辿り着くためには上り坂は避けられないのに
ぼくらは方向を何度も変えていたんだ
きみとぼく
若かったあの頃


I sometimes sit and think about
Our evenings in the firelight
You and I
When we were young
Laughing at the crazy-patterned shadows
That were dancing on the wall
Without a care
With time to spend
Hardly speaking
For hours on end
That was you and I
When we were young.

Walking hand in hand beside the river
At the weekends
You and I
When we were young
Children with their fishing nets were laughing
As they took their catches home
Caterpillars in paper bags
Knees tied up with dirty rags
That was you and I
When we were young.

Brushing through the fallen leaves
Together in the autumn
You and I
When we were young
Planning for the future
Without knowing what it held for us at all
The road to nowhere never climbs
We changed direction a dozen times
That was you and I
When we were young.

【解説】
1974年の傑作アルバム「Ghost」から、美し過ぎて涙が出るほどの名曲。オリジナルRenaissance(ルネッサンス)のキーボード、ジョン・ホウクン(John Hawken)の優しいエレクトリック・ピアノをバックに切々とデイヴ・カズンズ(Dave Cousins)が歌う。

若かった頃のきみとぼく。恋人同士の二人だろう。無垢で世間知らずで、時間は有り余るほどあって、心配事もなくて、幸せだった二人。

将来のことを考えるといっても、現実的なことには考えは及ばず、辛そうなことがあると逃げてばかりいた二人。

その昔を思い出しているのは「I」(わたし)。今は一人なのか。「きみ」とは別れてしまったのか、あるいは先立たれてしまったのか。でも「彼女とぼく」ではなく、「きみとぼく」と言っているのだから、今も一緒に暮らしていて、若き日々を回想しているのかもしれない。あるいは、今は一人でも、今でも愛している身近な存在、大切な存在として「きみ」が心の中にいるのかもしれない。

「The road to nowhere never climbs.」は文字通り訳すと「どこにも通じていない道は決して上り坂にはならない」となるが、これは「どこかへ行こうとするなら、上り坂は避けて通れない」、つまり「何かをしようとするなら、辛いことを避けているわけにはいかない」という意味だと解釈した。

でも二人は上り坂が見えると、その道を進むのを止めて、方向を変えて(changed direction)いた。だから思ったように二人の計画(plan)は進まなかったのだろう。

でも、そういった若さゆえの無知なところを含めて、「わたし」は愛情を持って思い出している。二人の大切な日々のことを。泣けるなぁ。

ラストに静かに奏でられるエレピとムーグが、曲に彩りを加えて素晴らしいエンディングになっているのもポイントが高い。


1 件のコメント:

  1. Strawbsの長年のファンです。Strawbsは曲だけでなく、詩も味わい深く、長く口ずさめるものばかりです。
    そこで私の好きなDeep CutsにあるSo close And Yet So Far Away,またDeadLinesにあるWords of wisdomを取り上げてもらえませんか?

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