2009年4月23日木曜日

「ヒプノティック」パートス

原題:「Hypnotique」

Timelossタイムロス」収録



わたしは一輪の花 香りを嗅いで
一つだけ確かなこと それはわたしの運命
わたしに栄養を与えて そうしたら幸せをあげる

あなたは水 わたしをびしょびしょにして
二人がいっしょにいれば そこに調和が生まれる
わたしといっしょにいて そうすれば希望と情欲に満たされる

ここにわたしは今立っている 裸のままで
あなたが答えを求めても 何も得ずただ苦しむだけ

「わたしを愛するか愛さないか遊び」という むなしいゲーム


ここにわたしは今立っている しおれて
あなたを独り占めして わたしの一部にできると思ったのに
欲深な わたしの中に吸い上げられたたあなたの偽りの涙が

「私を求めてに泣いたのよ」


I'm a flower - smell me
One thing is certain - that is my destiny
Nourish me - and I will bring you happiness

You are my water - drown me

When we're together, there is harmony

Be with me - and all there'll be is hope and lust


Here I'm standing - naked

Your search for answers will end in agony

"Loves me not or loves me do" - a game in vain
Here I'm standing - withered
Thought I could keep you, make you a part of me

Miserly absorbed your false tears

"Cried for me"


【解説】
スウェーデンのバンドPaatos(パートス)のファースト・アルバムから、2曲目の「Hypnotique」(= Hypnotic 催眠状態の)。ささやくようなボーカル、エコーのかかったピアノとフルート。静かに美しい曲である。

しかしこのトリップ感覚を含んだムーディーさは、まさに女性が愛する男性に暗示をかけて自分の世界へと引きずり込もうとするような妖しさを秘めた曲である。
女性は一方的に相手に愛を求めている。「わたしは花」だから「水を与えて」と。そうすれば見返りとして「しあわせ」をあげるし、そうして二人がハーモニーを奏でることで、希望と情欲に満ちた生活が得られるのよと。

「Nourish me」「Be with me」と命令文が続く。それこそ暗示や催眠(hypnotic)をかけるかのようだ。

ところどころに使われている言葉がエロティックなイメージを喚起する。1連目の1行目「香りを嗅いで(smell me)」、距離がかなり近づかないといけないのと、においを嗅ぐという野生的な行為がエロティックさを感じさせる。

2連目の1行目、「drown me」も「溺れさせて、びしょびしょにして」と、単に水をやるというよりはもっと生々しい表現だ。

3連目「ここにわたしは今 立っている」は、準備を整えて「あなた」を待ち受けているかのようだ。それも「はだかで(naked)。しかし「あなた」はどうしていいかわからずただ苦悩(in agony)するだけだろうと言う。ことが思い通りに進まないであろうことを予期している。結局それは“私を好きになるならない遊び”という、空しいゲームだと。

この3連で、一方的に言いよっていた「わたし」に中に影が射す。そこには愛はないかもしれないと。そして静かに流れるメロトロン、フルート、ギターが、曲を次第に盛り上げていく。

4連で、「わたし」の思いは叶わないことがはっきりする。わたしは3連と同じように
同じ「ここにわたしは今 立っている」。ただし「しおれて(withered)」立っているのだ。同じ文で始まることで、結局そのまま相手にされず放っておかれたかのような印象を醸し出す。

過去形で「あなたを独り占めにして わたしの一部にできると思っていた」が、現実はそうはならなかった。ただ「わたし」が吸い上げたのは「あなた」の滋養豊かな水ではなく「偽りの涙」。それはわたしを生かしはしなかった。でもその涙は「わたしを求めて泣いたのよ(Cried for me)」。「わたしのために涙を流した」ともとれるが「わたし(のからだ)を求めて泣いた」とも取れる。だから「miserly(欲の深い、しみったれた)」なのだろうう。

しかし「いつわりの涙」であっても「わたし」はその状況を怒りもせずただ哀しみながら受け入れているのかもしれない。思う通りにならなくても、しおれてしまっても、あなたが答えを出せなくても。あなたを愛しているから。

曲はこの後メロトロンの劇的な音を背景にフルート、ドラムが激しい演奏を行い終わる。「わたし」のやるせない思い、
かなわぬとわかっても全てを投げ出しても自分のものにしたい「あなた」への思いを叩き付けるかのようである。

単なる歌ものに終わらない、どこか狂気をはらんだような歌詞と、静かにささやくようなボーカルから最後に劇的に盛り上がるドラマティックな演奏。Paatosの魅力あふれる名曲である。

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